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その17

以下,ゼロ除算の実体について,勾配,鏡像,体の構造および点の曲率から解説しよう。

まず,数学とは公理系,言わば仮定系から論理的に導かれる理論体系であるが,数学としては矛盾無く展開できれば言わば世の中とは無関係でも,あるいは何ら利用価値が無くても,純粋数学としては考えても良いとされている。このような意味で,数学をする者は自由であり,自由に何でも考えられることを好きなように考えても良いという意味で,数学の重要な精神として,自由を尊重する精神がある。

しかしながら,自分だけ,あるいは仲間内だけで,面白い,楽しいと研究していても,世の中への影響は大したものではないとして,大きな価値を評価されることはないだろう。そのような意味で,良い結果とは,良い影響を与えるもの,多くの人を感動させ,利用されたり,応用されるものは高い評価を得るだろう。基本的な結果は数学そのものの基礎であり,結果として大きな世界を支え,間接的にも世に大きな影響を与えるだろう。

そこで,ゼロ除算の意義を明らかにする意味で,典型的で具体的な意味付け,意義を述べたい。今回は勾配,傾きから,ゼロ除算の意義を明らかにしたい。

平面上に,真っ直ぐに立っている,電柱を想像しよう。多くの人に聞いてみたところ,その時,電柱は傾いていない,勾配はゼロであると言います。直感的にそのように発想しますね。その電柱が右に少し,ほんの少し,傾いたら,その電柱の勾配は大きく,少しが小さければ,勾配は正の無限に近いことが分かります。勾配とは,右に1移動したときの高さのこと(比)です。右を正方向とすると,反対の左方向に同じようにちょっと傾くと,今度は負の無限大に近い勾配を持つことになります。すると,真っ直ぐに立った電柱は,右から,勾配正の無限大に近づいた状態で,左からは,負の無限大の勾配に近づいた状態になります。真っ直ぐとは左右の勾配,負の無限と正の無限が一致した状態になります。そこで,真っ直ぐに立った電柱の状態自身の勾配は,我々の直感ではゼロでしたが,現代数学では,その状態の勾配は考えられないとなっています。勾配をy/xと考えると,y軸は,形式上勾配が1/0となって,ゼロ除算が不可能であるとなっているからです。ところが,新しく考えられたゼロ除算では勾配がゼロとなって,はじめに述べた私たちの直感とも一致するという,驚くべき,事実を述べています。

実はゼロ除算は,電柱の僅かな傾きの考えに顕に出ていることが分かります。

このような状況は関数 $y= 1/x$ の原点における状況と同様です。右から原点に近づけば正の無限大に発散,左から原点に近づくと負の無限大に発散するが,しかし,原点では突然にゼロである。

これは数学について,新しい現象を表しています:

一般に勾配を表す公式は $a$ で正の $x$ 軸から測った傾きの角を表すと勾配は$\tan a$ です。$y$ 軸の時,$a$は $\pi/2$ ですが,その時の $\tan$ の値はちょうど関数 $$y=1/x$$ の原点での値のように定義されず,不明のものと考えられてきました。複素解析ではそこで,極をもつと表現されましたが,ゼロ除算では解析関数は孤立特異点で確定値をとり,それがちょうど今の場合値ゼロを取るという意味を与えます。すなわち,ゼロ除算が与えた,値の実際的な意味が出て来たということです。

このように基本的な状況の中で,ゼロ除算が現れていたということは,驚嘆すべきことではないでしょうか。

次は,鏡の中に現れたゼロ除算の,堪らなく奇妙で,楽しい現象について述べたい。

以下次号















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奥村博 $($Hiroshi Okumura$)$
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